名勝松花堂及び書院庭園の災害復旧工事について(令和2年3月末 その1)
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八幡市では、令和元年度より松花堂庭園(八幡女郎花)の内園(ないえん)を主とする名勝松花堂及び書院庭園の災害復旧工事を実施しております。
このたびの工事は、平成30年6月に起きた大阪府北部を震源とする地震により被害を受けた名勝指定地内の建物や石造物などについて、国の補助金を活用して行う災害復旧工事です。
今回の記事では、松花堂の修復の続きについて報告いたします。
松花堂の修復について
【屋根で作業をする職人】
地震により松花堂の屋根のてっぺんにある瓦(宝珠(ほうじゅ))が傾いてしまいました。
そのため、宝珠の下に据えられている露盤(ろばん)、塀瓦(へいがわら)という瓦までを一旦おろし、それ自体に破損がないかを確認しました。
確認した結果、瓦自体に破損がないことが確認できました。一安心です。
次に、建物の軸がずれていないかを、屋根の内部「小屋組み(こやぐみ)」
を見ることで確認する必要があるため、必要な分、屋根に葺かれている茅(かや)をおろします。
【左:茅をおろす作業 1】
【右:茅をおろす作業 2】
茅の葺かれた屋根をそのまま上ると、足で穴を開けてしまうため、職人は丸太の足場をかけて作業をします。
【左:足場を使って作業する職人】
【右:おろした茅の束】
右上の写真のように、おろした茅を集めると、
【おろした茅】
この量でも屋根の茅の10分の1以下の量です。
方角による茅の状態の違い
【左:北面の茅】
【右:南面の茅】
左上の写真をよく見ると、茅にコケが生えてしまっています。
北面の茅は見るからに湿気を帯びていて、触ると屋根の先端に近い茅は、ポロポロ取れてしまいます。
一方、南面の茅(右上の写真)にはコケは生えておらず、触っても乾いていて、茅に張りがあります。
方角によって日当たりが違うことが、茅の状態からよくわかりました。
さて、今回の工事でおろす必要がある茅をおろし終えました。
【屋根の頂上部の茅をおろした状態】
茅をここまでおろすと、ようやく小屋組みを確認できます。
【小屋組みの確認】
松花堂の小屋組みは、大人が少しかがんで立てるくらいのスペースがあります。
建物の軸となる小屋組みを確認した結果、地震による被害はありませんでした。
【交換した銅板】
瓦の下に雨が入らないように仕込んでいる銅板だけ、地震により変形したため、新しいものに交換しました。
宝珠が据えられる柱のところに「平成25年修理」と書かれています。
前回の松花堂の工事の記録です。
10年も経たずに修理が必要となるとは、、、。
自然は時に恐ろしいです。
ここからは茅葺きの屋根をもとに戻していく作業です。
【再び茅を葺き始めた状態】
もともと葺いていた茅で状態のよいものと、新しい茅を使って屋根を葺き直していきます。
【左:茅を屋根に差し込む様子】
【右:奥にある茅を道具で引き抜く様子】
茅を差し込んだり、奥にある茅を引き抜いたりして、屋根の形状を整えていきます。
このとき、職人さんが使う道具を見せていただきました。
【左:茅を引き抜く道具】
【右:道具の先端】
職人の間で、「カラス」と呼ばれている道具です。先端が鳥のくちばしのような形をしています。
必要な分、茅が乗せられると、次の作業は、
【左:茅を刈る様子】
【右:茅を刈るハサミ】
専用のハサミ(「屋根バサミ」)で、茅を刈っていきます。
刃先が若干反っているのが特徴です。
乾いた茅をハサミで刈った時に出る「サクッ、サクッ」という音が、とても心地良かったです。
ハサミで刈った茅を、別の道具を使って叩き締め、馴染ませていきます。
【左:茅を叩き締める様子 1】
【右:茅を叩き締める様子 2】
【左:叩き締めるための道具】
【右:道具の先端部分】
職人の間で、「タタキ」「ガンギ」などと呼ばれている道具です。
屋根バサミでの刈込みと、ガンギによる叩き締めを繰り返し、屋根の形を整えていきます。
【屋根工事を終えた松花堂】
茅葺の屋根が、きれいに葺き上りました。
葺き直した部分とそうでない部分が、遠くからでもわかってしまう状態ですが、これから徐々に馴染んでいきます。
松花堂の屋根の工事は、これで完了です。
【足場の撤去途中】
屋根に上るための足場も不要になるので、撤去します。
【令和元年度の工事を終えた松花堂】
松花堂の修復は、令和元年度と2年度で実施の予定で、令和元年度の主な内容は屋根工事で、
- 地震により傾いた露盤宝珠の確認、据え直し
- 建物軸部の損傷の確認および損傷の修復(※損傷はなし)
- 地震により傷んだ茅の葺き替え
については完了したこととなります。
また当初の予定に追加して、床組の補修も一部行っております。
松花堂については、亀裂の入った壁を修復する左官工事がまだ残っている状態です。
こちらの工事については、令和3年度を予定しており、左官工事の完了をもって、松花堂の災害復旧工事が完了することとなります。
今回の報告は以上です。
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