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あしあと

    名勝松花堂及び書院庭園の災害復旧工事について(令和3年2月時点)

    • [公開日:]
    • ID:6824

    八幡市では、令和元年度より松花堂庭園(八幡女郎花)の内園(ないえん)を主とする、名勝松花堂及び書院庭園の災害復旧工事を実施しております。

    このたびの工事は、平成30年6月に起きた大阪府北部を震源とする地震により被害を受けた名勝指定地内の建物や石造物などについて、国の補助金を活用して行う災害復旧工事です。

    前回の記事で、書院の解体工程と書院西側から北側にかけて建っている塀の解体について報告しました。

    (注)タイトルをクリックすると記事にリンクします。

    今回の記事では、書院の解体のために必要な素屋根(すやね)を設置するため、軒足場(のきあしば)を用いて行う下屋部分の解体について報告します。

    書院は、南北にある蔵2棟を含めると、平面積が340平方メートルを超える大きな建物です。

    建物を解体するためには、全体を素屋根という仮の屋根で覆う必要があります。

    今回の工事では、上の図のような素屋根を設置するために、建物強度に直接関係のない下屋部分について、軒足場を用いて先に解体することになりました。

    書院の下屋部分の解体について(令和2年11月から)

    下屋部分の解体について、建物東側にある「縁側2」部分(書院平面図参照)の解体を中心に報告します。

    東側から見た書院

    【書院(東から)】

    下屋を解体するために、建物の外周に軒足場を設置します。

    東側から見た軒足場設置後

    【軒足場設置後(東から)】

    南側から見た軒足場の上

    【軒足場の上(南から)】

    下屋の屋根に近づけるようになったため、瓦を実測し、取解(とりと)いていきます。

    瓦を取解くと、その下には葺土(ふきつち)があります。

    瓦の実測

    【瓦の実測(北から)】

    南側から見た瓦取解きの様子

    【瓦取解き(南から)】

    北側から見た瓦取解き後の様子

    【瓦取解き後(北から)】

    葺土を撤去すると、杉皮が敷かれた土居葺きの状態になります。

    北側から見た葺土撤去の様子

    【葺土撤去(北から)】

    北側から見た土居葺き(杉皮撤去前)の様子

    【土居葺き(杉皮撤去前)(北から)】

    杉皮の下には野地板(のじいた)があります。

    南側から見た杉皮撤去作業

    【杉皮撤去作業(南から)】

    南側から見た土居葺き(杉皮撤去後)の様子

    【土居葺き(杉皮撤去後)(南から)】

    野地板の下には、それを受けている野垂木(のだるき)があり、さらにその下には、化粧板(けしょういた)とそれを受けている化粧垂木(けしょうだるき)があります。

    実際には、化粧板は書院本体と垂直に接合している縦材(=化粧垂木)と、複数の横材で構成している化粧小舞(けしょうこまい)で受けています。

    化粧材は屋内から天井を見上げた時に見える部材です。

    南側から見た野地板取解き後の様子

    【野地板取解き後(南から)】

    南側から見た野垂木取解き後の様子

    【野垂木取解き後(南から)】

    屋内の化粧小舞、化粧板

    【化粧小舞、化粧板(屋内、南から)】

    化粧板と化粧小舞を取解くと、床から上で残るのは軸組だけとなります。

    南側から見た化粧板取解き作業の様子

    【化粧板取解き作業(南から)】

    南側から見た化粧板取解き後の様子

    【化粧板取解き後(南から)】

    南側から見た化粧垂木取解き後の様子

    【化粧垂木取解き後(南から)】

    建物の大屋根から下屋に向かって出ているのは、桔木(はねぎ)という部材です。

    木製だけでなく鉄製の桔木も用いられています。

    このことは、事前に行っていた屋根裏の調査により、すでに分かっていたことで、おそらく木製の桔木が傷んで、より強固な鉄製のものに替えたのではないかと考えています。

    今後、解体が進む中で、桔木を替えた経過なども明らかになるかもしれません。

    大屋根から伸びる桔木

    【大屋根から伸びる桔木】

    木製の桔木

    【木製の桔木】

    鉄製の桔木

    【鉄製の桔木】

    縁側2の造作年代について

    化粧小舞まで取解いたために、書院本体と化粧垂木との接合部分(仕口(しくち))を確認することができます。

    書院本体側の軸組の一部である横材(胴差し(どうざし))と化粧垂木は、1本の釘で接合されていて、釘穴もその1本分しかありません。

    化粧垂木の仕口

    【化粧垂木の仕口】

    化粧垂木の仕口(寄りの写真)

    【化粧垂木の仕口(寄り)】

    化粧垂木の仕口(寄りの写真2)

    【化粧垂木の仕口(さらに寄り)】

    過去に今回のような部材の取解きを必要とする修理や建直しをしている場合、同じ釘穴に釘を打っても釘が効かないため、位置をずらして釘を打つことになり、使われている釘の本数以上の釘穴ができるはずです。

    釘が1本、釘穴も1つということは、この部分(縁側2)は、これまでに取解かれたことがなく、造作された当初の状態が残っていた、ということになります。

    では、造作された当初とは、いつ頃でしょうか?

    縁側2の西側には、玉座の間があります。

    この部分は、かつて男山にあった坊舎「泉坊」の客殿の一部と考えられており、明治の初めに数度移築された後、明治31年に現在のかたち、つまり書院の一部になったことが、棟札から確認できています。

    釘穴が1つということは、過去に建直されたことがないことを意味するので、少なくとも縁側2は、書院が現在地に建った明治31年以降の造作部分であると考えられます。

    縁側2が造作された時期について、より正確に推測するための根拠も発見されています。

    それは、縁側2の南につながる廊下1と、そのさらに南側に続いて蔵1の東側にある洗面脱衣室と客用浴室の解体時に見つかりました。

    北側から見た廊下1の瓦降し

    【廊下1の瓦降し(北から)】

    北側から見た解体後の廊下1以南

    【解体後の廊下1以南(北から)】

    北側から見た解体後の洗面脱衣室、客用浴室

    【解体後の洗面脱衣室、客用浴室(北から)】

    洗面脱衣室の床板裏面に、墨で「明治33年」と記されているのが分かります。

    構造上の繋がりを考えると、明治31年に書院が建った後、すぐに縁側2や蔵1周辺を追加で造作したと考えられます。

    洗面脱衣室の床板裏面

    【洗面脱衣室の床板裏面】

    洗面脱衣室の床板裏面(寄りの写真)

    【洗面脱衣室の床板裏面(寄り)】

    では、縁側2の解体作業に話を戻します。

    縁側2の床より上で残った軸組を取解きます。

    床板も外して、その下の床組も取解きます。

    南側から見た軸組取解き作業

    【軸組取解き作業(南から)】

    南側から見た床板取解き前

    【床板取解き前(南から)】

    北側から見た床板取解き後の様子

    【床板取解き後(北から)】

    軸組と床組を取解いて、縁側2の解体が完了しました。

    素屋根ができるまでの間、シートで養生します。

    南側から見た軸組、床組取解き後の様子

    【軸組、床組取解き後(南から)】

    シート養生した書院東側

    【シート養生した書院東側(南から)】

    玄関部分の解体について

    昭和59年(1984年)に玉座の間とともに京都府登録文化財となった玄関部分も下屋であるため、今年度中に解体します。
    北側から見た玄関

    【玄関(北から)】

    解体着手前の玄関

    【解体着手前の玄関】

    瓦葺き、こけら葺きの取解き後の様子

    【瓦葺き、こけら葺きの取解き後】

    この部分は玉座の間と同様、泉坊の客殿の一部だったと考えられています。

    昭和57年(1982年)に修理された後、京都府登録文化財となりました。

    この修理において、部材の接合にはボルトなどの現代金物を使っているものの、部材の取替えはほとんど行わず、古材をそのまま使用しています。

    つまり、玄関の部材は、泉坊の客殿が建った慶長年間から江戸時代初期のものである可能性があるということです。

    今後の部材の調査で、より明確な年代が特定できるかもしれません。

    玄関の野地板

    【玄関の野地板】

    野地板を固定するボルト

    【野地板を固定するボルト】

    解体が進んだ玄関

    【解体が進んだ玄関】

    下屋部分の解体が完了したので、素屋根を設置し、いよいよ書院本体の解体に移ります。

    今回の報告は以上です。

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    八幡市役所こども未来部文化財課

    電話: 075-972-2580 ファックス: 075-972-2588

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